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HUNTER×HUNTERが、というか冨樫義博がなぜウケるのかを考察した動画が面白かった

冨樫義博(とがしよしひろ)のハンターハンターについての山田玲司による考察動画が面白い

冨樫義博のHUNTER×HUNTER(ハンターハンター)はなぜ面白いのかーーー

 

YouTubeを見ていたら、山田玲司さんといういう人が説得力のある考察をされていました。

この人も漫画家さんなのか。ちょっとにわかなんでよく知らない人だけど

冨樫義博や井上雄彦(スラムダンクやバガボンドの人)と同期デビューらしい

 

 

 

話し方が聞きやすくてすごく楽しかった動画だったんで、

書き起こしてみる。

こっから先、ほとんどは山田玲司がしゃべっていることをただ書いているだけ。

 

 

漫画家の嬉しいこと、苦しいこと

冨樫義博もおそらく、と前置きした上で

マンガ家は読者に「次、どうなるんですか?」と聞かれるのが一番うれしいんだという。

しかも連載中は特に、らしい。

なるほど。

この時点で漫画家さん本人が言うもんだから説得力がある。

 

「次が楽しみでしょうがない」って思われたいんだね。

これが一番の賛辞なんだって。

 

二番目は?

「あのマンガでぼく人生変わりました」だって。

 

それと別枠で、「いい絵が書けた」時に嬉しいと。

そして冨樫義博は、別枠の良い絵に関して喜びを感じるタイプで、

だけど、長期連載で過酷な中、絵をないがしろにしなくてはならない状況が生まれてしまい苦しんだと。

調べれば調べるほど、その苦しみ方が半端じゃない

 

幽遊白書の後半でだいぶヤバイことになってると

それで終わったあとに揉めていた

その後コミケで勝手に同人誌を売って再び騒ぎになった

んだって。

締め切りに追われて、書きたいクオリティーの絵を表現する前にタイムリミットが迫るような日々が続いたからってことね。

 

そして、その作成した同人誌の中には、連載を振り返って書かれた文章が。

「連載を終えて…、振り返れば敗北宣言」という内容らしい

「徹夜をすると心臓に痛みが走り出すようになり、徐々にその感覚がつまってくる」

ような生活で、身体的にも限界だった

一週間の中で半日程度しか寝られない、後の日は仮眠のような生活

だけど絵のクオリティーを妥協したくなく、アシスタントにも頑張ってもらいながら、

それでも間に合わず、かなりスケジュールはおした

「仕事で過労死はイヤだ、ぽっくりいくなら遊んでいる時か、趣味で原稿を書いている時がいい。カラー原稿こわい。読み切りこわい」

 

「これは冨樫義博のことを誰も責められないだろう」

と山田玲司。

 

一番のストレスは、「原稿が満足に出来ないこと」とも。

そして…

そのストレスを解消するには「原稿を一人で書ききること」だった

 

そりゃあ腰も悪くする。匍匐前進しか出来ないような時期もあったらしい

うつぶせでマンガを書いてギリギリでやっているような人間が、冨樫義博。

 

 

 

絵のクオリティー

あの荒れた絵を見てて思ったことがある

少年ジャンプって空にトーンをあまり貼らない

けど、ある時期から空を表現する時に

トーンを貼って雲部分を削るようになった

オレは江川さんのところで散々雲の削り方をやらされた藤島康介といっしょに

スクリーントーンを削る作業。すごい大変だけどキマると嬉しいわけ。

 

だけど、鳥山明が登場してドラゴンボールを書くことになると…

トーンなんか貼りゃあしねえ!!

細い線でサラサラサラーーっと雲書いちゃう。

 

この流れが線が太いものから細いものになっていくのが、80年代のブームになるんだけど

その後さらに、白くなるって流れがあるんだよ。ドラゴンボール以降。

 

その行き着く先は何か、って言うと、

「面白いネーム(下書き)だったら、絵なんかどうだっていいんだよ」という鳥山さんの叫びを、冨樫が継いだのかなって思ってたの、レベルEを見ながら。

それぐらい自信があるのかなって思ったの。だからパンクだと思ったし、

「オッケー、カッコいいじゃねえか!」と思ったら、、冨樫本人は違ってた

 

本人はちゃんと書きたかったのに、書けなかった。

震えながら締め切りに間に合わせようと書いてた。

 

クオリティー的に不本意なマンガ原稿を出す苦しみは漫画家しかわからないでしょ

 

本当は描きたかった。もっと時間があればもっとちゃんと書きたかった、みたいな苦しみとずっと戦っていたっていう

 

バスタードの萩原一至(はぎわらかずし)さんいるじゃん

あの人の原稿を見せられたことがあるんだって

 

めーっちゃ上手かったんだって。

「こりゃかなわねえな」って思ったらしい。

で、冨樫はセーラームーンの武内直子と結婚するじゃん?

あれはなんか萩原さんつながりらしいね。

あの人の周りは絵師ばっかりだから。

絵師のつながりがたくさんある中で、冨樫自身の絵は荒れていくっていう苦しみもあったんだね。

 

 

幽遊白書の暗黒武術会編

主人公たちが出なきゃいけないことになるんだよね

彼らに拒否権はなく、生き残るためには勝つしかないっていう武道会に行くんだけど…

 

もうねコレ、ジャンプそのものでしょ。

選択肢ないんだよ、行くしかないし、勝つしかない。

それが、少年ジャンプ。

もうこれは、冨樫の心象風景としか思えないね。

 

これぞ、あの頃のジャパン。今のジャパン。

死んだらおしまい。

 

そこの気持ちとリンクするの。読者の気持ちと。

 

っていうのもあったな

 

 

冨樫メソッドとは、チューニング…?

壬申の乱(じんしんのらん)っていう事件の番組がこの前やってたんだけど

 

若い天皇を倒すって話じゃない

大海人皇子(おおあまのみこ)が初代天皇を名乗る、天武天皇(てんむてんのう)になる

どうやったかっていうと、不満の溜まってた豪族たちを味方につけて、

悪いのはあいつだからやっちまえ!っていうストーリーなんだけど、

アレの解説で磯田道史(いそだみちふみ・哲学者で歴史学者)がうまいこと言っててさー、

「炎上するというのは、乾いたところなんですよ」って。要するに潤ってない

だれかが不満が溜まって火をつければ、周りも同調して火が燃え広がって炎上する

これは、暴動や内乱や革命もそうだけど、

作品のヒットもそうなんじゃねーの?!

って話につながるんですよ。

 

つまり、ヒットする要素っていうのは

「乾いたところに、火をつける」ってこと

どこが乾いてるのかっていうのを

感覚的にわかってるヤツがヒットメーカーになる、っていうこと。

 

いろんな人がこのやり方で成功しているんだけど、

実にウマいのが冨樫。

 

冨樫はそれを、ミクスチャーで見事に時代ごとにやってて。

それがすごく面白い!!

 

幽遊白書のあたりから始まるのは「天下一武道会」

要はそれまでのジャンプスキルが入るんだけども…

 

すげーウマいのがこの、

HUNTER×HUNTERが1998年スタートなんだけど…

 

1998年、ハンターハンターがスタート

ハンターハンター。

これ、何が最初に始まるかって言うと…

 

ポケモンスタイルでスタートするの。

「オレはポケモンマスターになりたい」みたいな感じで冒険に出て。

そんで仲間が出来て、みたいな。

で、「ジムに行くぜー!」そんな感じ

’’ハンター’’なる、よくわからないものになろうとする

しかも、「父ちゃんがやってたらしい」って漠然とした感じ。

これはRPGの始まり方とよく似てる

 

そんでそこから始まるのが

資格試験なのよ。

のちのち「学校内バトル」が

NARUTO、ハリーポッター、バトルロワイヤルみたいなことが流行るんだけど

 

今までは「外に行くぜー!!」ってテンションが普通だったのに。

スラムダンクの流川はアメリカ行くんだよ、最終回は空で終わるんだよ

たからウテナも外の世界に出てる。

 

で「外の世界になんか、出られません!って振り切るのがこのあたり(ハンターハンター連載スタート時)なんだよ。

 

オレ(山田玲司)と同じ世代だったら…、外に出ようとするんだよ。

だから、「行け!現実と戦え!」って終わるの、オレのマンガもそう。

 

だけどこのあたり(ハンターハンター連載スタート時)から、

「空なんか見ねえ」という流れになるの。

「この中で生き抜くしかねーんだよ」って。

なんならバトルロワイヤルみたいに周りの人間殺してでも

これ「あずみ」もそうなんだけど。

 

そういう気分っていうのは読者の

「結局なんだかんだ言って、塾行かなきゃダメじゃん、学歴がなかったらダメじゃんこの世界は」という絶望感を受け入れることを良しとした、あきらめた

ゼロ年代(2000年前後)に対して、設定がガチャン!とハマッて。

 

これがねえ、98年に冨樫は先んじてやってるところがニクいなあー。

実を言うとNARUTOが翌年から始まる(1999年)

ワンピースは一年前に始まってて、外に行くんだよ(1997年スタート)

流行に合わせてチューニングする

この冨樫の流れが今(2017年、この番組が放送された時)ドコにあるかって言うと

進撃の巨人なんだよ。

外に行きたいけど、出られない、しかも外から来るー!って

 

「それが(タイミング的に)ハンターハンターのキメラアントだ」そう!

それを冨樫は時代ごとにやってて。

 

どんどん合わせていくのよ。

チューニングを合わせちゃう、違うなと思ったら合わせちゃう。

 

ハンターハンター最初のうちは、「天下一武道会」やってるんだよ。だけどやめちゃう。

 

今(2017年、番組の年)ね、進撃の巨人も含めてなんだけど

「学校の中はダメだ。」って異世界に行っちゃってます。ほとんどの作品が異世界に行っちゃてる。

けものフレンズも異世界っちゃ異世界でしょ。

 

そういうことをヤメましょうよっていう精神がオレら(山田玲司)の世代だとあるんだよ。

Get Wildだからね、外に出ていく。

 

だけど平気でそれが出来る(異世界などの流行に乗れる)っていうのが冨樫義博のウマいところ。

 

閉鎖国家はジャパン?

日本人の夢っていうのがそもそも

「外に行って活躍する」で成功してたのが、バブルまでなんだよ。

 

だからロックフェラーセンターを買収するんだ、島耕作

けど、

「ダメじゃん」って閉じちゃったのがオレ(山田玲司)の下の世代。

それでどうしたか。

「とりあえず資格を取ろう」ってなる。

その点ハンターハンターはもうずっと資格を取ろうってやってるじゃん。

資格取りバトルをずーっとしてるわけ。

 

そして時代を追うごとに、

どんどん殺伐としていくっていう。

 

バタアシ金魚の望月峯太郎がドラゴンヘッドになるじゃん、あーいう変化

 

あれを冨樫はひとつの作品でやってしまう、しかも、少年誌でやってしまう。

なんでコレ(作品のチューニング)をやれちゃうのか。

それはおそらく、「山形から来てるから」

山形の新庄市ってところから、大学まで山形にいるんだよ

でハタチでデビューだから。そんですぐに漫画家になるんだよ

そっから中心に来て、ずっと寝る間もなくマンガ描いてるんだよ。

 

で、この人ゲーム好きなんだよ。

要するに何を見て来てるかっていうと、

山形の風景と、ゲームしか見てないのよ。

おまけにRPGツクール大好きなの、この人。

で、レベルEの中でRPGツクール出てくる。

 

要するにゲームを作るんだよ、マンガの中に。

こういうのはオレ(山田玲司)の世代だとやっちゃいけない事だと思うわけ。

だって外に出なきゃいけないんだから。

なのに冨樫はシレッとそこに行けてしまうと。

 

(合いの手)「グリードアイランドか。そうか、それでかー!」

 

でね、2003年キメラアント編で「喰われる人間」という時代の恐怖感を生々しく書いてる。進撃の巨人とつながっていくんだけど

 

それでいよいよヤバイぞっていうのを自分で察知して、

これも早いんだよねえ〜、閉鎖国家というものが出てくる(キメラアント編のNGLのこと)

閉鎖国家、まさにジャパンだよね、閉じてる

 

その後に「すげーな」と思ったのが、選挙やんのね。

十二支ん。

これAKB選挙が花盛りの時代だよねコレね。

「それもイケんだーー!」みたいな。(チューニングを合わせた)

 

その後、外の世界は暗黒大陸だってなる

もはや、進撃の巨人と一緒だよねえ〜

「外の世界は怖いよう」

 

冨樫にとっての外の世界って何かと言ったら、

「ジャンプ以外の、マンガ業界」

 

…暗黒です!

…暗黒なんです!

 

サザンのようなミクスチャースタイル

この人、サザンオールスターズスタイルなのよ

ネタ元がわかんないくらいもう「冨樫」にしていく。

 

山下達郎もサザンも、初期はミックスが足りなくて元ネタがバレやすかった

 

だけど、よく見るとこれ(冨樫義博の作品)はヒップホップスタイル、ミクスチャー時代の漫画家。

 

なぜか読むと恥ずかしい

なぜか冨樫義博作品を読んでて、恥ずかしいんです。

 

「幽遊白書で泣くのが恥ずかしい」というオレ(山田玲司)同世代もいて「だからサラッと読むようにしてるんです」とのこと

 

なんでかっつーと…

ものすごいベタで厨二なんですよ。

 

大人になると、キルアのようなセリフなんて恥ずかしいのよ。

 

なのに冨樫は大人にならず、厨二の要素を保持したまま

ずっと着地しないでいる。

「学校から帰ってきたらずっとテレビゲームです、オレが世界を変えてやる」っていうあの、なんつーの飛影みたいなああいうヤツ、ああいうキャラクター

ダークヒーローみたいなやつをずっと心のなかに入れておくのは難しい。

 

だけど彼(冨樫義博)は一度死んでいるんです、

幽遊白書の冒頭で一度死んでる。あそこで幽遊白書の主人公はすぐに生き返ったけど

彼(冨樫義博)は亡霊にずっと中二ソウルのまんま着地しないでいるから、

ロックなんですよ彼は。

 

そこのチャンネルにいつも合っていないと少年誌は書けないの。

売れた漫画家ってどうなるかっていうと、

ポルシェ買ってゴルフやるしかなくなっちゃうの。

間をすっ飛ばして一気に大人になっちゃう。

 

けど、冨樫はそれをしなかったんだよね。

ずっとRPGツクールやってる。

そのマインドでずっときてる。

 

まとめ、冨樫義博が売れる理由

まとめとして、冨樫義博が売れる理由は

「読者とともにさまよい、読者とともに苦しんでる」から

だそうです。

 

金八先生のような説教が始まらない。

ずっとサバイバルしてる。

 

ずっと本人が混迷してる、混乱してるから。

ずっと「どうしよう」ってしてる。

 

まっとうなキャラを、ゴンを中心に持ってきたけど、

良い子すぎて動かないから、昏睡状態にしちゃったんだよ。

で、厨二っぽいヤツばっかり引き立つんだよ。

その方がいまの読者に合うってわかってる。

ゴンじゃねえ。キルアだ。ゴン寝てろと。

 

だから、さまよい苦しむ。悟らない、語らない、混乱してる。

自分はダメ人間だっていう自覚がある。

ここも見事。読者と一致してる。

成長しないって約束したんだよ、マンガの神と。

冨樫義博が勉強中なんです。と。

けど、マンガ家としては幸せなんです。

「次、どうなるの?」が読者から聞けるから。

 

 

……ということみたいですよ。

いやー面白い考察だった。

 

 

 

 

ガッハッハ!